『シェンムー』シリーズの主人公。横須賀の芭月武館で生まれ育つ。3歳のころ母親が病死。それ以来、厳格な父・巌の下で芭月流柔術の修行に明け暮れる日々を過ごしていた。しかし、突如現れた謎の中国服の男・藍帝に父を殺害され、天涯孤独の身となり、父が最後に残した言葉「愛すべき友を持て」を胸に抱きながら、その死の謎を追う旅路を続けている。
性格は無鉄砲で喧嘩っ早いが、内に秘めた意志は強固。復讐への決意は長引く旅を経ても、決して揺らぐことはない。性格に加え、仇への復讐を逸るあまり、考えるよりもまず行動することが多く、荒くれ者との喧嘩が絶えない日々を送っていた。だがその一方で、行く先々で知り合った人々とときには支えあったり、ときには諌められたりの触れ合いも多い。父の言う「愛すべき友」たちと、かけがえのない経験を重ねることで、確かな成長を遂げている。
女性に接するのはやや苦手で、同窓生の原崎望に無関心を装ったり、望の親友である田嶋に頭が上がらなかったりする。子供たちとは彼らと同じ目線で交流し、年配者や武術家に対しては、敬意を持って接する。
人里離れた桂林の村に住む少女。大自然の中でのびのびと育った彼女は、山野の植物や動物に関する知識が豊富で、けもの道などを見分けたり、風の流れで天候を読んだりすることもできる。素朴で純真だが、時としてその優しさゆえに自らの危険をかえりみず行動することも。中国悠久の歴史と広大無辺の大地を象徴するような、神秘的で謎めいた存在である。
莎木の花が咲いた頃に生まれたため「莎花」と名付けられたが、実の両親を幼い頃に亡くしてしまう。
現在は、石工を営む育ての親である袁と暮らしている。
涼の夢に登場する少女の姿が、彼女とよく似ているが、果たしてそれが意味することとは……
黒社会の巨大組織・蚩尤門の最高幹部のひとり。現在は失伝され、幻と言われている伝説の拳法を使う。拳法に関しては天賦の才をもち、表の世界にいれば、歴史に名を残す達人になっていたことは間違いない。その性格は冷酷非情にして、繰り出される拳はまさに苛烈の一言に尽きる。すべてを威圧する鋭い眼光は他者を寄せつけず、同じ蚩尤門内部でも、まともに会話できる者すら少ない。人間の限界を越えた過酷な修行により、全身に99の傷が刻み込まれた。古来より陽の象徴である龍の鱗が99あるという伝説から、蚩尤門内部で藍帝は龍の化身と信じられ、また畏れられている。左腕に、蚩尤門の刺青を入れている。
ビバリーヒルズワーフを縄張りとしているストリートギャング、ヘヴンズのヘッド。カリスマ性があり、その言動や行動力でヘヴンズを統率している。金に対する執着心が異常に強く、基本的に仲間以外の他人を信用しない。頭の回転が早く、ギャンブルも得意で、勝てないときは平気でイカサマも使う。口が達者で悪知恵が働き、腕っ節もあるのでアバディーンではかなり恐れられている。裏社会の組織である黄天会と対立しており、いずれひと泡吹かせようと考えている。
バタフライナイフ使いで、運動神経も高い。ジョイとも顔見知りである。
頭のバンダナ同様、レンの特徴を表すブルーのジャケットの背中には、中国の神獣、麒麟の刺繍が施されている。
彼の素性を知る人間はヘヴンズ内でもいないが、その実は、モンゴル馬族の出身らしい。
洞察力にすぐれ、あらゆる状況を判断した上で、先を見越して行動する才女。口数が少なく、その真意を表に出すことはあまりない。自分の感情を律しているかのように表情はつねに穏やかで、その涼しげな瞳は、人の心の奥底まで見通すかのようである。
道教や中国文学にも造詣が深く、その知識は底が知れない。
幼い頃に生き別れた兄のために、毎日参拝する彼女。一体何者なのだろうか?
バイク好きで快活、思ったことはどんなことでもすぐ口にするストレートな女の子。わがままでぶっきらぼうな言い方から誤解されやすいが、本当は心の優しい、裏表のない性格である。
父親の梁春雲は港の貿易業務を取り仕切る、人々に信頼の厚い人物。ジョイはその一人娘で、その影響なのか、港でジョイに対して頭の上がらない人たちも多い。
涼と同様ジョイもまた、幼くして母親を失っている。そんなジョイに対し、父親はかなり甘やかしているとのこと。
横須賀の陳親子とも面識があり、時折連絡を取り合っている様子。
涼のことをひそかに慕う女の子。日本で生まれたが、小学生の頃は両親の仕事の関係で、しばらくカナダのバンクーバーに渡っていた。帰国後、祖母の住む横須賀で再び暮らすようになった。中学校転入当時、カナダとは環境の違う日本にすぐなじめずいじめられていたが、その時さりげなくかばってくれたのが涼だった。それ以来、涼への想いは募り続け、いつの日か告白しようと決意している。自分の考え方をしっかり持っていて、なおかつ相手の気持ちを考えることもできる性格である。
いつもは祖母の花屋アイダを手伝う。将来は翻訳か通訳の仕事に就きたいと思っている。
芭月流の宗家にして、涼の父親。性格は実直で、豪胆さゆえの落ち着きがある。また、謙虚さを尊び、礼儀と信頼を重んじる。まさに質実剛健という言葉がふさわしい人物である。唯一の趣味と言えるのが書道であり、手紙やはがきも筆でしたためることが多い。武術に関しては天性の才能にめぐまれながらも、その才能におぼれない、努力型の人間である。
若いころは武者修行を重ねて、海外にも渡ったという。その厳しさゆえに、涼は反発することもあるが、父親としてまた武術の師として大きな目標になっている。
物語の冒頭、1986年11月29日に藍帝によって殺されてしまう。奇しくもその日は、涼の18歳の誕生日でもあった。
芭月武館に住み込んで10年近くになり、涼にとっては家族とも呼べる存在である。性格は温厚で人当たりがよく、何事にも一生懸命になるタイプ。不器用で武術の上達は遅いが、練習熱心で真面目な性格が巌に認められて、内弟子となる。以来、涼と共に芭月流柔術の稽古をしている。
多少早とちりするクセがあり、思い込みで行動して失敗することもままある。だが、さっぱりとして話しやすい性格なので、涼にとっては心を許せる相談相手でもある。
物静かで働き者の、古風な女性。芭月家に住み込んで15年になり、家事、家計の一切を任されている。性格は穏やかだが芯が強く、どんな時でも毅然とした態度をくずさない。裁縫、掃除、洗濯、すべてをそつなくこなすが、何よりも料理好きで、特に日本料理はプロ顔負けの腕前である。
礼儀作法やしつけに関しては口うるさいが、それ以外は割とおおらか。涼の行動に関しても、陰ながら見守っている。優しく、温かいその眼差しは、芭月家になくてはならない存在である。
華僑でも屈指の実力者。世界各地に貿易用拠点を持ち、横須賀もそのひとつである。
貿易品は多岐に渡るが、特に骨董品に精通、国宝級の美術品を密輸しているとのウワサもあるが、真相は不明。一見柔和だが、冷静沈着で不測の事態でも取り乱さぬ鉄の意志を持つ。
息子の貴章を後継者として厳しく鍛え、代々伝わる燕青拳も伝授している。
陳耀文の息子。貿易商を営む父のそばで経営を学びながら、ボディガードも務める。常に冷静沈着、感情を内に秘めるタイプであるためクールな印象を受けるが、実はかなり熱い男。横浜に生まれ、幼い頃から陳耀文のもとで燕青拳の厳しい修行を積む。そのため、そっけない態度をとりながらも、内心では似た境遇の涼に親しみを感じている。
ジョイとも知人関係で、最近では電話のやり取りがあった。
蚩尤門内部でも、所属のはっきりしていない末端の構成員。藍帝が芭月家で”鏡”を強奪した後に行動を始めている。どうやらもう一つの”鏡”を手に入れ、蚩尤門に取り入ろうと計画しているらしい。
特異な体質の持ち主で、その使う技も人間離れしたトリッキーなもの。蟷螂拳をかじったらしいが、かなり我流が入っているので見分けがつかない。
性格は陰湿でヘビのように執念深く、目的のためにはどんなあくどい手段も取る。
秀瑛の元で働いている少女。明るく世話好きで、誰からも好感をもたれている。幼い頃文武廟に引き取られた彼女は、その恩返しも兼ねて働いている。年長者に対しても物おじせず意見するが、決しておごり高ぶったり、人の悪口を言ったりはしない。性格は快活で、行動的。気に入った人に対しては、お節介と思えるほどの世話を焼いてしまう一途さがある。
最近は、仲良くなった同世代の女の子とお洒落なカフェや美味しいレストランを巡るのにはまっているらしい。
通称トム。ニューヨーク出身の気さくなアメリカ人。いつも陽気でラップやレゲエミュージックをかけ、リズムに合わせて踊っている。音楽のノリに合わせて作られるホットドッグは、まさにアメリカンテイスト。世界各国をヒッチハイクでめぐっていたといい、中南米を旅していたころに知り合った友人から怪しげな格闘技を習ったという噂も……涼の良き友であり、理解者である。
ハニーという彼女がいる。
ヘヴンズのメンバー。レンを実の兄のように慕い、その逞しさと男らしさに憧れている。背は低いが負けん気が強く、リーダー格のサム、ラリー、クールJとよくつるんでいる。子供のわりに義理堅く、受けた恩は忘れない。
ヘヴンズでも右に出る者がいないほど手先が器用で、鍵開けが得意。根は優しく、純粋な心をもった少年である。
ビバリーヒルズ沿岸のボートエリアに住んでいるが、そのことは他のヘヴンズメンバーには知られていない。